デザインしている時間より、調整している時間のほうが長い——デザイナーの「手を動かす時間」を雑務から取り戻す設計

先週、自分の一日を試しに記録してみました。出社して最初にやったのはメールとチャットの返信。次に見積もりに添える参考画像をクライアントから受け取って、フォルダのどこに入れたか分からなくなって探す。昼前に修正のやり取りが2件。午後は社内の定例と、別案件のキックオフ。気づいたらIllustratorを最初に開いたのは夕方の5時でした。 デザイナーなのに、その日デザインに触れた時間は1時間半ほどでした。 これは特別に忙しい日の話ではありません。むしろ平均的な一日です。正直なところ、こういう日が続くと「自分は何の仕事をしているんだっけ」という気持ちになります。手を動かしてデザインを作りたくて入った仕事なのに、実際は連絡と調整と確認待ちの管理で一日が溶けていく。この記事は、その溶けていく時間をどう取り戻すかの話です。時間術の精神論ではなく、案件の回し方とAIの使いどころを具体的に書きます。

デザインしている時間より、調整している時間のほうが長い——デザイナーの「手を動かす時間」を雑務から取り戻す設計

「仕事のための仕事」が半分以上を食っている

感覚の話だけだと説得力がないので、調査データを一つ置いておきます。Asanaが出している「Anatomy of Work Index」という働き方の調査で、日本のナレッジワーカーは就業時間のうち58%を「仕事のための仕事」、つまり会議や進捗確認、情報探しといった調整業務に使っているという結果が出ています。専門スキルを実際に使う仕事に充てられているのは28%だけ。重複作業に年170時間、不要な会議に年120時間を費やしているとも報告されています。やや前の調査ではありますが、肌感覚としては今もほとんど変わっていません。

これはデザイナーに限った数字ではないものの、デザイナーはこの構造にとりわけハマりやすいと思っています。理由は単純で、デザイナーが案件の情報の通り道になりやすいからです。クライアントからの修正、ディレクターからの指示、外注先への発注、社内レビュー。そのほとんどがデザイナーの手元を経由します。経由するたびに、確認して、転記して、返信して、という作業が積もっていきます。

「雑務が多い」とひとくくりにしてしまうと、何を減らせばいいのかが見えません。なので、まず非デザイン時間を分解してみます。

デザイナーの非デザイン時間は4種類ある

一日が溶ける原因を観察してみると、性質の違う4つの時間が混ざっていることに気づきました。

ひとつは連絡と調整の時間です。メール、チャット、口頭での指示の受け答え。一件あたりは数分でも、一日に何十件も飛んでくると、集中が細切れになります。デザインは一度のめり込むと加速する作業なので、15分おきに通知で中断されると、加速する前に止められ続けることになります。これがいちばんダメージが大きい。

ふたつめは確認待ちを見張る時間です。クライアントにデザインを出して返事を待つ、社内承認を待つ、素材の支給を待つ。待っている間、こちら側の作業は止まります。やっかいなのは、待っているものが複数あると「どれの返事がまだか」を自分の頭で覚えておかないといけない点です。3案件で確認待ちが5件あると、それを忘れないために脳のメモリを常時消費します。

みっつめは情報を探す時間です。「あの案件のロゴデータ、最新版どこだっけ」「クライアントが前に言ってたNG色、なんだったか」。チャットを遡り、フォルダを掘り、メールを検索する。冒頭の私の一日でいうと、参考画像を探していたあの時間です。地味ですが、塵が積もると相当な量になります。

よっつめが転記と二度手間です。会議で決まったことを議事録に書いて、それをタスク管理ツールに書き写して、関係者にチャットで共有する。同じ情報を3回入力しています。Asanaの調査でいう「重複作業」の正体は、たいていこれです。

この4つは原因も打ち手も違うので、まとめて「効率化しよう」とやると失敗します。一つずつ見ていきます。

なぜデザイナーほど巻き込まれるのか

打ち手の前に、構造の話を少しだけ。

デザイナーが調整業務に飲み込まれやすいのは、本人の段取りが悪いからではありません。案件の作りがそうさせています。デザインは案件の中で「目に見える成果物」を持つので、進捗を聞かれる窓口になりがちです。クライアントも「あのバナーどうなってます?」とディレクターを飛ばしてデザイナーに直接聞いてくる。指示が口頭やチャットでバラバラに飛んでくるから、それを受け止めて整理する係を、いつのまにかデザイナーが兼任することになります。

そして情報が散らばっていること。これが探す時間を生みます。デザインデータはFigmaやドライブ、指示はチャット、契約や見積もりはメール、過去の経緯は誰かの記憶。一つの案件の情報が5つの場所に散っていると、何かを確認するたびに5つを巡回することになります。

つまり問題は、デザイナー個人の時間管理ではなく、案件まわりの情報がどう流れているかの設計にあります。だから「朝にタスクをまとめましょう」みたいな個人技では、根っこが解決しません。

AIで消える雑務、消えない雑務

ここでAIの話を挟みます。2026年のいま、デザイナーの周りはAIだらけになりました。何が肩代わりできて、何ができないのかを正直なところで整理しておきます。

肩代わりが進んだのは、まず制作そのものです。Figmaは2025年に「Figma Make」というプロンプトから動くプロトタイプまで作れる機能を出しました。テキストで指示すると画面構成を生成してくれるので、ラフを描く時間はかなり圧縮されます。Adobeも2026年4月にFirefly内にAIアシスタント(Creative Agent)を載せてきて、「こういう成果物がほしい」と言葉で伝えると、PhotoshopやIllustratorをまたいで複数工程の作業を実行する、というところまで来ています。Fireflyは学習元がライセンス済みコンテンツで、生成画像が権利侵害で揉めたときの法的責任をAdobe側が負う商用補償を付けている点が、実務で使ううえでは安心材料です。

ここまで読むと「じゃあデザイナーの仕事は減る一方じゃないか」と思うかもしれません。けれど、減るのは制作の手数であって、調整の時間ではありません。むしろ生成が速く安くなったぶん、「とりあえず何案か出して」が増えて、選んで・直して・通す作業はかえって増えています。会議の数も、確認待ちの数も、AIが勝手に減らしてくれるわけではありません。

では調整のほうにAIは効かないのか。ここは分けて考える必要があります。議事録を取る、長いチャットを要約する、会議の内容からタスクを起こす。この手の「人間がやると面倒だが判断は要らない」作業は、AIがかなり肩代わりできるようになりました。逆に、トンマナの最終判断、クライアントへの提案、関係者の合意形成といった「判断と責任が乗る」部分は、いまのところ人間に残ります。「AIがそう言ったので」はクライアントに通用しません。

だから狙いどころははっきりしています。判断の要らない調整作業——転記、要約、リマインド、情報の集約——をAIと仕組みに寄せて、人間の時間を判断と制作に戻す。これがこの記事で言いたいことの核です。

手を動かす時間を取り戻す4つの設計

4種類の非デザイン時間に、それぞれ打ち手を当てていきます。

連絡を非同期に寄せる。 通知のたびに中断されるのを止めるには、即レスを期待される文化を崩すしかありません。具体的には、確認や相談を「いま口頭で」ではなく「案件のコメントに書いておいて、手が空いたら見る」に移す。返信のタイミングを自分で選べるようにするだけで、集中の細切れが目に見えて減ります。デザインに2時間まとまって向き合えた日と、15分おきに中断された日では、出来上がるものの質まで変わります。集中時間を守ることは、わがままではなく成果物の品質の問題だと、私は思っています。

確認待ちを頭で見張らない。 待っているものを記憶しておく仕事は、ツールに渡すべきです。「この案件はクライアント確認待ち」「これは素材待ち」とステータスとして残しておけば、何が止まっているかを脳で覚えておく必要がなくなります。さらに、締切が近いのに止まったままの案件を自動で知らせてくれる通知があれば、見張る作業そのものが消えます。確認待ちは、人間が覚えておくのではなく、システムに見張らせる。

情報を探す時間を消すには、散らばりを止めるしかない。 これは小手先のフォルダ整理術では解決しません。案件にまつわる情報——指示、データへの参照、過去の経緯、決定事項——が一箇所に集まっている状態を作るのが先です。探す時間が長いのは、探し方が下手なのではなく、情報が5箇所に散っているからです。集約されていれば、そもそも巡回する必要がありません。

転記と二度手間は、入力を一回にする。 同じ情報を議事録・タスク・共有チャットに3回書いているなら、会議の記録からそのままタスクが起きて、関係者にも自動で見える、という流れにできないかを考えます。ここはまさにAIが効く場所で、議事録から「やること」を抽出してタスク化するところまでは、もう実用域に入っています。

4つに共通しているのは、「デザイナー個人が頑張る」ではなく「情報の流れを設計し直す」という発想です。

道具の率直なところ

ツールの話もしておきます。等距離で全部褒めても役に立たないので、使ってみての正直な感触で書きます。

工数管理から入る選択肢があります。TimeCrowdは作業時間を記録して見える化するツールで、何に時間を取られているかを数字で把握できます。「自分はデザインより調整に時間を使っている」を可視化するには有効です。ただ、見えるようになるだけで、調整時間そのものが減るわけではない点は割り切る必要があります。料金は規模で変わり、100名を超えると一人あたり月1,200円(税抜)といった水準です。Web制作・デザイン会社に振り切った工数管理ツールとしてはPaceもあり、こちらは制作業の粒度に合わせた作りになっています。タスク管理側だとJootoがデザイナーの担当者別ビューを用意していて、誰が何を抱えているかは見やすいです。

ただ、工数管理もタスク管理も、それ単体だと「測る」「並べる」までで、調整・連絡・校正・確認待ちが別ツールに散ったままになりがちです。AsanaやNotionのような汎用プロジェクト管理は優秀ですが、画像の上に指示を書く校正のような、デザイン現場の肝の部分は別ツールを足すことになります。

身も蓋もない言い方をすると、デザイナーの時間を食っているのは「ツールが一つ足りない」ことではなく「情報がツールをまたいで散っている」ことのほうです。だから、新しいツールを足すより、いくつをまとめられるかで考えたほうが効きます。

LOGLIKEでデザイナーの時間を守るなら

私たちが作っているLOGLIKEも、ここまで書いた「散らばりを止めて、調整をAIと仕組みに寄せる」ための道具です。先に正直に書いておくと、LOGLIKEはデザインを生成したり編集したりする制作ツールではありません。作るのはFigmaやAdobe、それを回す・束ねる・記録するのがLOGLIKE、という役割分担で考えてもらうのが正確です。

連絡を非同期に寄せる部分は、コメント・メンションが担います。案件やタスクに紐づけてコメントを残せるので、「いま口頭で」を「案件の中に書いておく」に移せます。確認待ちを見張る部分はあとで対応が効きます。気になったタスクをワンクリックでブックマークしておけるので、確認待ちを頭で覚えておく必要が減ります。締切前の詰まりはAI予告通知が知らせてくれるので、見張る作業そのものを手放せます。

情報を探す時間については、案件管理・デザイン校正・コメント・ナレッジが同じ案件の中に集まっている設計が効きます。校正は画像の上に直接コメントをピン留めでき、しかもクライアントへ外部共有できるので(パスワード保護付き)、相手にアカウントを作ってもらわなくても確認と指示をもらえます。指示がチャットに流れず画面の上に残るので、「あの修正どこに書いてあったっけ」と遡る時間が減ります。過去の経緯やNG項目はナレッジベースに残しておけば、毎回探しに行かずに済みます。

転記と二度手間のところは、AI機能の出番です。AIと会議が打ち合わせの記録を取り、AI課題生成が要件や議事録からタスクを起こすところまでつないでくれるので、「会議の内容を議事録に書いて、タスクに書き写して、共有する」の三度手間が一本になります。ダッシュボードで案件横断の状況を一望できるので、進捗を聞いて回る時間もいりません。

繰り返しますが、デザインを速く美しく作るのはFigmaやAdobeのほうが得意です。LOGLIKEに期待してほしいのは、その制作の周りで散らかりがちな連絡・確認・記録を案件単位で地続きにまとめて、デザイナーが手を動かす時間を奪い返す部分です。

速く作れる時代こそ、デザイン以外を減らす設計が差になる

AIで制作が速くなったいま、デザイナーの一日のうちデザインに使える割合は、放っておくとむしろ下がります。作るのが速くなったぶん本数が増え、本数が増えれば連絡も確認も増えるからです。生成ツールを増やすだけでは、この構造は変わりません。

変えられるのは、案件まわりの情報の流れです。連絡を非同期に寄せ、確認待ちをシステムに見張らせ、情報を一箇所に集め、転記をAIに肩代わりさせる。どれも派手ではないし、入れた翌日に劇的に変わるものでもありません。でも、これを整えた月とそうでない月で、デザインに向き合えた時間はまるで違います。

今日の自分の一日を、一度記録してみてください。デザインに触れた時間が想像より短かったなら、それはあなたの段取りの問題ではなく、情報の流れの設計の問題です。LOGLIKEは無料から試せます。制作ツールはそのままに、その周りの調整をどれだけ減らせるか、自分の案件で一度確かめてもらえたらと思います。

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